シルバーウィークの初日はオーディオ・ユニオン新宿店で開催された「ビートルズ・リマスター聴き比べ試聴会」に参加しました。ビートルズ・リマスター盤を9月9日の午前0時に購入した30名限定の試聴会ということで、お店のオーディオルームが特設会場となっていましたが、試聴会は当初予定時間の2時間を上回る2時間半に渡って行われ、内容もものすごい濃いものになりました。
1.機材
試聴会の最初に今日の機材の説明があったのですが、アビーロード・スタジオではB&W(英国のトップオーディオメーカ)社のスピーカー800Dが使用されているので、それにもっとも近いスピーカーの801Dを左右2本用意したとのことでした。
価格.comで調べてみたら、このスピーカーだけで、100万円以上するようです。スピーカーの横に立ててある木は音の拡散を防ぐために置くもののようで、これだけで、20万円するそうです。そして、このスピーカーの能力を最大限に生かすシステムを日本の高級オーディオメーカのAccuphaseで組んだとのことで、Accuphaseの営業の方より機材の説明がありました。
その説明によると、パワーアンプM-6000(1台90万円)を通常ならば、スピーカー1台に付き1台のところを2台用意(通常スピーカーケーブルは黒赤2本のケーブルを使用してますが、それの黒用、赤用にそれぞれパワーアンプを使用しているということで、超贅沢!)、レコードプレーヤー(これだけAccuphaseは作ってないため、海外製で、ターンテーブル(28万円)、アーム(17万円)、カートリッジ(6万円))フォノイコライザー(20万円)、プリアンプ(120万円)、CDプレーヤー+トランスポートコンバータ(180万円)、他にクリーン電源装置50万円ということで、合計1,000万円を軽く越えるシステムとなり、普通ならばここまでやらないものの、Accuphaseの営業の方もビートルズファンで自分もよい音を聴きたいために率先してものすごいセッティングを行ったとのことでした。なので、まるでタモリ倶楽部に自分が出演しているような気分になるような、超マニアックなオーディオ機材での試聴となりました。
2.Want List
試聴会には各席にAccuphaseのカタログと、司会の宮永正隆氏がディスクユニオンに送ったWant Listとその回答が書かれた紙が置かれていました。以下に置いたPDFファイルがそれです。
上記の回答で色付きのものが今回試聴予定であり、用意できなかったものでも、ディスクユニオンの店員さんの私物をもってきたりして、用意したものもあるということで、俄然期待感が盛り上がりました。
3.セットリスト
試聴を行ったセットリストは以下の通りでした。
1.アルバム「Please Please Me 」
選曲:I Saw Her Standing There
使用盤:①日本盤アナログモノラル(2回目再発盤)
②旧盤CD
③UKアナログ ゴールドパーロフォン
(コンディションVG+で9万2千円)
④リマスターCD(モノラル盤)
2.アルバム「With the Beatles」
選曲:It Won’t Be Long
①旧盤CD
②UKアナログ マトリックス1 ラウドカット
③リマスターCD(モノラル盤)
3.モノラル・シングル(Love Me Do)
①旧盤CD(パストマスターズ)
②UKアナログ レッドパーロフォン
③リマスターCD(モノマスターズ)
4.モノラル・シングル(Please Please Me)
①旧盤CD
②UKアナログ レッドパーロフォン
③リマスターCD(モノマスターズ)
5.モノラル・シングル(Paperback Writer)
①リマスターCD(モノマスターズ)
②UKアナログ
6.モノラル・シングル(Revolution)
①リマスターCD(モノマスターズ)
②UKアナログ
7.アルバム「Abbey Road」
選曲:Something
①旧盤CD
②日本盤CD(回収盤)
③日本盤アナログ(プロユース盤)
④USジュークボックス盤(シングル、盤面青い)
⑤ドイツ盤・シングル(70年代再発盤)
⑥リマスターCD
8.アルバム「Let It Be」
選曲:Long and Winding Road
①旧盤CD
②UKアナログ ホワイトカラー盤
③リマスターCD
9.アルバム「Rubber Soul」
選曲:Drive My Car
①リマスターCD(モノラル)
②UKアナログ マトリックス1 ラウドカット
③日本盤アナログモノラル(20周年記念盤)
10.アルバム「Revolver」
選曲:Tomorrow Never Knows
①UKアナログ マトリックス2/1 ラウドカット
②リマスターCD(モノマスターズ)
11.アルバム「Sgt. Pepper’s Lovely Hearts Club Band」
選曲:Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band (Reprise)
A Day in the Life
①UKアナログ モノラル
②リマスターCD(モノラル)
上記のような超豪華セットリストでした。超豪華オーディオシステムで、レア盤を聴けるというめったにない機会なので、印象を記憶に留めるべく、懸命に聴きながらメモを採りました。僕はあまりオーディオの知識はないので、あまりうまい説明はできないのですが、総じて、アナログ盤の方がまろやかで、聴きやすい印象を受けました。そして、旧盤CDは超豪華オーディオシステムで聴くと、言われているほど音が悪い印象はなかったものの、なんだかボーカルばかり強調されて、楽器が奥に引っ込んでしまっている印象を受けました。古い時代のCDだと、収録できる音の情報量が少ないためにこうなってしまっているのかなと思いました。また、今回はモノラル盤中心の試聴だったのですが、モノラルなのにものすごく音に立体感があるのが驚きました。宮永正隆氏は「部屋中に面で広がってぬりかべのような存在感を示している音」と表現していました。60年代初期のイギリスでは、モノラルが一般的でステレオなんて必要ないと言われていたのが、ちょっとわかった気がしました。とにかくモノラルのアナログ盤の迫力はすごい迫力でした。でも、リマスターCDはアナログにかなり肉薄していると思いました。司会の宮永正隆氏はリマスターCDの存在意義を「今までは高級料理店のフルコースでしか食べれなかった料理を、吉野家の牛丼のように一般庶民でも食べられるようにした」と例えていましたが、今まではレアで超プレミアのついたアナログ盤でしか聴けなかった音に近い音を一般の音楽ファンでも聴けるようにしたということなんだと思います。そう考えると、今回のボックスセットはなんだか割安のような気がしてみました。ただ、迫力ではアナログに負けるものの、アナログではよく聴こえなかった音がリマスターCDでははっきり聴こえる曲もあったので、アナログかリマスターCDかは、良し悪しではなく、好みの問題と言えるレベルにまで肉薄しているのではないかと思いました。また、これだけの超高級システムでもアナログ盤のスクラッチノイズは避けられず、コンディションの悪い盤はボーカルの音が歪んでしまっていました。(アナログレコードが好きな人はこの点はあまり気にしないようですね。)なので、取り扱いの気軽さを考えると、やっぱり僕はリマスターCDで十分かなと思いました。
以下に個別の雑感を書きます。
・「Paperback Writer」ではアナログ盤では埋もれてしまっている、パーカッションの「シャカシャカシャン」といった感じの小気味よいリズム音が曲の全体的に入っているのが、リマスターCDでははっきりと聞き取れました。ここはリマスターCDの方の利点かなと思いました。
・「Revolution」はアナログ盤の圧勝と紹介されていましたが、リマスターCDではエンディングの部分でノイズ音のように入ってくるリードギターがはっきり聞こえたものの、アナログ盤では埋もれてました。なので、迫力をとるか、細かい音まで聴けるのをとるか、好みの問題かなと思いました。
・「Abbey Road」はいろいろなのが聴けて面白かったのですが、日本で独自に先行発売して英国EMIからクレームがついて回収された盤は初期CDらしい、ちょっと存在感が薄い音でありながら、全体的にクリアーな音で、旧盤CDよりもいいかもと思いました。また、日本盤アナログ(プロユース盤)の音は低域重視のマスタリングがされていて、「Something」のオルガンもすごく存在感があり、今日聴いた「Abbey Road」の中で一番気に入った音でした。ドイツ盤・シングル(70年代再発盤)は湯浅学氏が発見して、大絶賛したとのことで、再発でもマスタリングエンジニアの腕で音が変わる例として紹介されていました。
・「Rubber Soul」の国内盤モノラルは20周年の赤帯がついた盤はUKカッティング盤で、黒帯のものは日本カッティングだとのことです。なので、赤帯盤はイギリス人に人気らしいのですが、音はたいしたことないと紹介するつもりが、超高級オーディオなので、かなりいい音に聴こえてしまっていました。
・「Revolver」のUKアナログ マトリックス2/1 ラウドカット盤は実は今日一番楽しみにしていたものでした。音圧がものすごくって、「Tomorrow Never Knows」の別ミックスが入っているということで評判になっているもので、今日初めて聴くことができました。過激な曲の「Tomorrow Never Knows」はすごい迫力で、さらに効果音の挿入のしかたが、ハンパなくぶっ飛んだミックスでした。あまりにぶっ飛びすぎているから、差し替えられたのかなと思ったものの、このぶっ飛びミックスの音源も欲しいなあと思ってしまいました。
・「A Day In The Life」の中間のオーケストラの盛り上がるところの迫力はすざまじくって超高級オーディオのすばらしさをすごく実感できました。オーケストラが挿入されている部分はオーケストラを入れる前にエンジニアがカウントを数えている声が録音されていて、アナログではその声がかすかに聞こえたものの、リマスターCDではまったく聴こえませんでした。これはデジタル処理で消したのかなと思いました。
といった感じで、めったに体験できないことが、体験できたとっても貴重な試聴会でした。
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