G3戦としては今ひとつで、先行有利なメンバー構成だったために昇級初戦のトロワゼトワルが軽ハンデを利用して好走するのではとまでは予想できたものの、ここまでトリッキーなレースをするとは思わず驚かされた。今年の秋の中山は例年以上に高速化していて、もはや世界レコードタイムが出ても、それに何の価値も感じない。やはり出走メンバーのレベルを元にレースの価値を判断するとこのレースはさほど高く評価すべきものではない。
1.レース結果の基礎データ
2019年 9月 8日(日) 4回中山2日 天候: 晴 馬場状態: 良
11R 第64回京成杯オータムH
3歳以上・オープン・G3(ハンデ) (国際)(特指) 芝 1600m 16頭立
馬場差 -2.0 完全タイム差 -0.8
タイムランク B メンバーランク C
LAP :12.3-10.6-10.4-10.9-11.2-11.4-11.5-12.0
通過:33.3-44.2-55.4-66.8 上り:67.4-57.0-46.1-34.9
1600m戦で2~4ハロン目まで10秒台が続くのは高速馬場を考慮してもかなり異質であり、前半は超ハイペースと判断できる。このペースで1着馬がバテなかったのは軽ハンデによるものと考えるべきだろう。
2.隊列分析
超ハイペースであることを証明するように、直線入り口ではかなり長い隊列になっている。セントウルステークスに比べて隊列の横幅が広いがこれは芝を全面張り替えしたことによるものだろう。
3.完全タイム差検証
多くの馬が大きくパフォーマンスをアップさせているので、かなりの過剰評価。1着馬は軽ハンデが活きた激走と考えても、2着以降は前走と大差ないパフォーマンスと考えるべきで1.5秒くらいは低く見た方がよい。
4.各馬の分析
1着 10番 トロワゼトワル 牝 4 横山典弘 52 1.30.3 34.9
スタートは一番速いというわけではないが、二の足で強引にハナを取り切り、ハイペースでガンガン飛ばし、最後まで他馬をよせつけず2着馬に0.6秒差をつける圧勝だった。
レース後の横山典弘騎手のコメントによると「開幕週の馬場でもあり、この馬の持ち味を生かしたかったです。見ている分には速いペースだったと思いますが、この馬場を考えれば速くないんです。追って切れない馬で、52キロでもあったので積極的に行きました。」ということで、高速馬場と軽ハンデを考えての騎乗だったことがわかる。
追って切れない馬ということで、先行して好走してきていた馬だが、大して切れ味のある末脚を持った馬がいなくて、速い逃げ馬がいない組み合わせに恵まれたことが大きく。そして、ハンデに恵まれたことがものすごく大きかったようだ。このハイペースでバテなかったのは、現時点では軽ハンデによるものと考えておいた方がよい。この馬の真の実力は次走を見てから判断すべきである。
2着 11番 ディメンシオン 牝 5 北村宏司 53 1.30.9 34.2
まずまずのスタートから積極的に4番手の位置を取り、ややインの位置を確保する。4角に入ることでは3番手に進出し、直線で内のジャンダルムと併せ馬のような形になり、2着となった。
結局先行したことが吉となる、前残りのレースとなった。この馬の戦績をみると比較的先行することが多いというだけで、先行して持ち味を活かせるタイプでこのレースでは有利と考えるのは難しかった。それよりも高速馬場巧者ということが大きかったように思う。この馬が高速馬場巧者で高速のペースでも前の位置が取れるということはしっかり覚えておくべきだろう。それに加えて瞬発力勝負では分が悪いことも覚えておくべきだろう。
3着 2番 ジャンダルム 牡 4 藤井勘一 55 1.30.9 34.2
スタート後はこの馬が一番速く、他の速い馬を先に行かせて3番手の最内のポジションをキープする。4角で追い出しを少し遅らせたためディメンシオンに前に出られたが、そのあとしぶとく競り合って3着を確保した。
インをロスなく走れたことが大きい。この馬の戦績を見ていると、ゲートの出が悪く後方からになることが多かったが、前走からはそれが解消して、位置が取れるようになったようで、もうこの馬はスタートがよく内枠であれば要注意な馬と見た方がよいのかもしれない。ただ、末脚は大したことなく、今回は内枠と末脚が鋭い馬がいなかったことと、ハンデに恵まれたことが大きい。
内枠の前残りは特に中山競馬だとよく発生するが、この馬が前残り候補と考えるのは戦績からは難しかった。
4着 3番 カルヴァリオ セ 6 黛弘人 53 1.31.0 33.9
スタートはよく、ジャンダルムのすぐ後ろの最内のポジションをキープする。コーナーはインぴったりを回り、直線で、前を行く馬の外に持ち出し進出を図るも、バテた1頭を交わした程度の脚色で、かと言って後方から鋭く差してくる馬もいなかったので、4着となった。
この馬も今回は内枠と末脚が鋭い馬がいなかったことと、ハンデに恵まれての4着であり、こうした馬が上位に来ていることからもレースのレベルはさほど高くないと判断できる。
あまり好走とは考えない方がよさそう。
5着 1番 プロディガルサン 牡 6 三浦皇成 55 1.31.0 33.5
スタートはよかったが、速いペースについていけず後方からになる。4角から追い上げて、直線では一番外を回り追い込むも5着まで。あの脚色ならば、4着馬は交わせるだろうと思うものの、最後はソラを使ったようである。この馬はWIN5対象レースで何度も何度も人気を裏切っており、WIN5を買っている人ならば信用してはいけない馬ということがよくわかると思う。
重賞では足りない馬と、基本的に考えておいてよいと思う。
6着 5番 ストーミーシー 牡 6 大野拓弥 56 1.31.1 33.8
後方からになるが、プロディガルサンの一列前の位置を追走し、直線では他馬の差し馬が外を回る中インを突いてきたが、大して伸びなかった。
この馬の末脚からすると、インをロスなく立ち回れたのだがらもっと切れていいはずだが、超ハイペース戦のため、追走で末脚が削がれてしまったと考えるべきなのだろう。騎手は前が狭かったのを言い訳にしているが、パトロール映像を見るとさほど厳しい壁ではない。やはり末脚が削がれてしまったのだと思う。
7着 4番 クリノガウディー 牡 3 戸崎圭太 54 1.31.2 34.1
馬郡の中の中段を追走。4角の終わりではやや前が窮屈になるも、その後外に持ち出してもジリジリとしか伸びず。
トップスピードが速いタイプではないが、加えて高速馬場適正もないと考えてよさそうだ。
ある程度直線の長いコースで時計がかかり持久力勝負のレースになれば、また好走する可能性はあるかもしれない。
8着 7番 ロードクエスト 牡 6 M.デム 57 1.31.3 33.9
後方からになったが、ここ2走に比べると徐々に前を狙う形で、4角で一気に大外から前を狙うも右鞭を入れたとこで大きく外にヨレてその時に鐙が外れさらに落鉄もあり、ピリッとした脚が使えなかった。
4角の終わりでは、一瞬来たと思わせてくれて、デムーロ騎手としては今回ベストを尽くしてくれたと思う。右鞭で大きくヨレたのでコーナリングに難があるのかもしれない、また、以前も落鉄したことがあるので、落鉄しやすいのかもしれない。
デムーロ騎手がここ数年手をかけている馬なので、今回狙ってみたが、外差しが決まらない馬場であったことや、アクシデントがあったことからまだ見限らない方がいいかもしれない。次走もデムーロ騎手が乗るのであれば、相手次第であるが、また少し狙ってみたい。
9着 6番 ヒーズインラブ 牡 6 内田博幸 56 1.31.3 33.8
後方のまま見所無し。
10着 14番 レインボーフラッグ 牡 6 丸山元気 54 1.31.4 33.3
後方で特に中盤ではまるでついていけずかなり後方になった。上がり3ハロンタイムは最速にはなっているが、まるで評価できない走りだった。
11着 9番 グルーヴィット 牡 3 松山弘平 55 1.31.5 34.6
まずまずのスタートから5番手を追走。4角に入るところから速くも鞭が入り、直線ではズルズル後退した。
前走のレース回顧で「軽ハンデを活かしての勝利だったと思う。この後まるで活躍出来ない可能性もあると思う。」書いたとおりで今後も厳しい戦いが続くのではないかと思う。
12着 16番 キャプテンペリー セ 6 津村明秀 54 1.31.6 34.5
特に見所無し。
13着 13番 プールヴィル 牝 3 秋山真一 52 1.31.6 35.2
離れた2番手を追走するも直線ではズルズル後退。騎手のレース後コメントだと「同じ世代の牝馬同士ならマイルもこなせますが、古馬相手の重賞だと少し長いのかもしれません。牡馬とやるならもう少し短い距離の方が良さそうです。」ということなので、短距離戦に矛先を変えてきたら、少し警戒が必要かもしれない。
14着 8番 フローレスマジック 牝 5 石橋脩 53 1.31.7 33.6
ゲートの出が悪く後方から、加えてハイペースにまるでついて行けなかった。
ゲートに難があることは良く覚えておくべき。加えて速いペースのレースではまるでダメなので、活躍できるレースの幅はせまい。
15着 12番 ヤングマンパワー 牡 7 嶋田純次 55 1.32.5 35.2
重賞の後方着順の常連になってしまった。
16着 15番 ハーレムライン 牝 4 木幡巧也 53 1.32.5 35.6
中段を積極的に走るも、最後の直線では囲まれて馬の気持ちが萎えてしまったとのこと。前走も寄せられると怯んだということなので、精神的な弱さがある馬ということは覚えておくべき。
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